ありがとうアークナイツ:エンドフィールド、ありがとうMirairo Rider 〜 3DCGを用いたミュージックビデオについて

 

 

オタク向け3DCGが好きだ。大好きだ。心の底から愛している。
たまこラブストーリーほど私の心を動かした映画は無いが、次点を挙げるとするならば「楽園追放」と答える。大学を辞めてから8年ほど携わっていた仕事も、元を辿れば3DCGが好きだからだ。

おかげでモデリング、カメラ、シェーダー、ポストエフェクト等々に対し、にわかな知識だけは持っている。

 

先日、ぼんやりXを眺めていたところ、目を惹かれる映像があった。


 

ストパンで馴染み深い、機械的なユニットを履いた3Dのキャラクターが、宙を進んでいる。調べたところ、リーノというキャラクターの特殊ダッシュモーションであることがわかった。タイトルはアークナイツ:エンドフィールド。

 

 

手前の二人誰?

 

アークナイツといえばYostarのソーシャルゲームである、という認識程度で、他は何も詳しくない。先にこの認識を正しておくと、アークナイツは中国のゲーム会社「Hypergryph」が開発を行っているゲームで、Yostarはそのパブリッシャーである。
そしてさらに言えば、アークナイツ:エンドフィールドは「GRYPHLINE」がパブリッシャーなので、Yostarはあまり関係が無さそうである。

 

まぁ小難しい座組の話は(私もよくわからないので)置いておいて、とにかく私はリーノの特殊ダッシュモーションに惹かれるものがあった。

最近は「NTE」を楽しんでプレイしており、遥か昔は「原神」も遊んでいたため、この手のジャンルにはそれなりに馴染みがある。NTEに余暇をかなり圧迫されているのでエンドフィールドを真面目にプレイする可能性は薄かったが、冒頭で話した通りアニメ調3DCGが好きな私としては「ちょっと触ってみるか」という気持ちを抱くには十分なきっかけであった。

幸い、よくダラダラと通話する友人がエンドフィールドをプレイしていたため、ガイド役になってもらうことにした。盤石である。

リーノはこの記事を書いている2026年8月に登場したピックアップキャラで、もちろんガチャを回して入手する必要がある。しかし友人いわくエンドフィールドはかなり石を貰えるゲームだということで、そこも一安心。キャラ一体程度なら無課金でも引くことはできるだろう。

 

ということでそそくさとゲームをインストールし、起動。

 

このタイトル画面がカッコいいのよね

 

エンドフィールドをプレイした一旦の感想としては、ひたすらにルックが良い。

モデルもテクスチャもエフェクトも綺麗にまとまっていて、プレイしていて違和感が全く無い。荒廃した世界のくすんだ空気感が美しく表現されている。いわゆるToon的なルックとはまた少し違う味わいがありつつ、私にとってはノイズである洋ゲーっぽさは感じられない。

 

 

 

感心しつつ、チュートリアルを進めていく。このゲームは工業の自動化が売りの一つのようだが、そこにはほぼ興味が無かったので一旦すっ飛ばした。目当てはピックアップのリーノを触る(いやらしい意味ではない)ことである。アンドレイさんの話全く聞いてない、ごめん。でもアンドレイさん好きだよ。鳥だし。

 

カスの工場

 

なんやかんやあって石を貯め、ガチャを回し始める。道中で咲季お姉ちゃんの声が聴こえてビビったりしつつ、貯めては回し、貯めては回し、

 

 

貯めては回し、

貯めては回し、貯めては回し、

貯めては回し、貯めては回し、貯めては回し、

貯めては回し、貯めては回し、貯めては回し、貯めては回し、

 

 

 

で、天井ってワケ(120連)。

 

 

ビギナーズラックという言葉をご存知無いか?
俺がNTEを薦めて始めてくれた友人は40連で残虹弾いてたし、もう一人の友人は10連でイロヒ引いてたぞ。そういうもんだろう、そうであれよ。なんというかもう少し手心という。

しかし「そういうもん」という言葉を使うなら、ガチャとはまさしく「そういうもん」なのである。無情。人間はガチャに抗えない。

あとすいません、これだけ文句言ってますが途中すり抜けで出たのがオクギだったのでこれ以上文句は言いません。こいつもモーション良すぎね。そんで強い。リーノと同じパーティに入る。ありがとう。

 

さて目的のリーノは手に入った。色々触ってみる。

 

やはり特殊ダッシュのモーションがとても良い。発生と同時にユニットが出現し、滑空する。オクギの特殊ダッシュと違い前方へグッと伸びていく印象があり、「移動している感」を強く味わえる。何よりメカユニットがかっちょいい。

 

戦闘モーションも細やかに作られており、演出はピックアップに恥じない派手さがある。NTEに慣れていたのもあり、エンドフィールドを始めて触った時は初期キャラの戦闘モーションがもっさりして感じられたが、リーノやオクギは機敏で動かしていて楽しい。

 

 

総じて満足である。
実は道中、石を貯めるのが面倒すぎてちょっと課金してしまったが、友人もNTEに課金してくれたので相殺とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

が、話はここで終わらない。

 

本題に入る。キャライベントクエストである。

これはキャラ専用のイベントで、そのキャラを主軸とした番外編が描かれる。
自分としてはリーノのモーションが好きという理由で引いたのでキャラ自体にそこまで愛着があるわけでは無かったが、ここまで苦労して引いたのだからやらない理由は無い。

 

リーノのイベントクエストのあらすじはざっくり以下の通り。

リーノは大人気のアイドルで、四号谷地でのライブが企画されており、現地住民は大盛り上がり。しかし、当の本人がライブ前に行方不明となってしまう。

偶然それを知った管理人(主人公)はリーノの痕跡を追い、リーノを発見。
リーノはある目的があり、管理人の協力を仰ぐために自ら逃走したことを知る。

ある目的とは、所属事務所の手が及ばない完全オリジナルの企画ライブを敢行すること。管理人はそれに協力することになる。

 

 

といった感じ。

であるのならば当然「ライブシーン」があると予想されるわけだが、大抵こういうものはライブシーンがふわっとカットされるのが常である。なんせ3Dライブシーンは工数が重い。3Dってすごく面倒くさい。もちろんアニメも大変だが3Dもなんやかんやクソ大変なのだ。

 

 

 

──────⚠️ここからぼちぼちネタバレあり⚠️──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてイベントは進み、無事リーノによるオリジナルライブが開催されることになる。

画面が暗転し、ムービーシーンに入る。

 

 

 

 

え?ライブシーンちゃんとやるんだ

 

 

 

 

おお

 

 

 

 

 

すご

 

 

 

 

は?

 

 

 

飛んでる

 

 

 

ヤバいヤバい

 

 

 

 

 

 

ありがとう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

こういうのですよ。こういうのが見たいの。俺は。

人間が好きなんじゃないの。キャラが好きなの。キャラクターが魅力的に動いてるのが見たいの。創作が好きなの。萌え萌え美少女が大好きな、おっさんたち(軽度の偏見)が魂込めて作ったものこそが俺の心を揺らすのよ。

画面の向こうには未来と自由が溢れていて、地球の重力からは解き放たれているわけですよ。悲しみで花が咲くものか。

 

好きカットを紹介させてください。その前にできれば一回見てください。
本当はゲーム内で見て欲しいけどもうなんでもいい。見てくれ。

 

youtu.be

 

 

 

 

では好きカットを紹介します。

 

 

リーノが飛び立つカット。バーニアが点火して、一度ホバーしてから浮き上がる。
ここの質感がたまらない。「癖」を感じる。

完全に姿勢を制御しきっているわけではなく、ユニットが少し振動しているのも芸が細かい。振動は鼓動、火炎は息吹である。

 

 

 

飛び立ったリーノ(一番上)を2つのサブユニットとパーティクルが追いかけていく。
それぞれの軌道を空に描きながら、リーノの元へ収束していく。

リーノはユニット装着時、横にサブユニットがあるわけだが、これも演出装置として活用されている。

 

 

 

 

飛行しながら客席を巡る。歌姫の周遊である。

アイドルとして、自分という存在の価値を無遠慮にばら撒くその姿は偶像の名にふさわしい。

 

 

 

 

 

これは真下からの視点である。

観客の真上まで降りてきてから、少しだけスピードをゆるめ、またすぐに飛び去っていく。走馬灯はこれがいい。数えたところ18Fくらいだった。走馬灯は18Fで十分であることがわかった。

 

 

 

 

 

デェッッッッッッッッッッケ ひょっとして私の母になってくれるかもしれなかった女性ですか?

 

 

 

 

 

バーニアから光が噴出する。
わざとらしいほどのブースト表現。この、なんというか、ドバァッというかドボァッみたいな光の漏れ方が脳にクる。

アリサの66RK。

 

 

 

 

 

ホログラムのようにビルが現れる。エンドフィールドは荒みきった世界の話なので、これは在りし日の街の姿だろうか。

 

 

 

 

ギガントリーノが出現。

演出意図はよくわからないがなんかスッゲー派手でサイコーって感じだ。

 

 

 

 

 

ここのターンの仕方気持ちよすぎて耳舐められたんかと思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DoD3】ゼロとウタのタビをスル 後編その2 - YUUのゲーム雑記

見たことある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャー!!!!!!!!!!!!!!!!

頭からつま先まで丸ごと俺の扶養に入ってくれ 

 

 

 

 

空中ターンに合わせてサブユニットが円を描く。
原子核を思わせる動きは我々が「自然」というあまりにも大きく美しいシステムで駆動しているのだと実感させられる。

減点0、総合得点3000000.00、金メダルです。

 

 

 

 

 

 

 

 

月光蝶である!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

おかえり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここのアンドレイさんもガチで最高

 

萌え萌え美少女が、メカ履いて、飛んで歌うわけ。最高じゃんね。それでいいじゃんか。男子ってこういうのが好きなんでしょ?そうだよ。遺伝子にそう書いてあんの。油性ペンで。
見終わった時画面の前で拍手したわ。感謝が溢れて止まんねえんだわ。ずっと食べたかったメシを作って提供してくれたのよ、エンドフィールドは。

 

楽曲も大変素晴らしい。ストリングスとチップチューンが散らばったポップなアニソンロックでありつつ、色彩を反射し拡散するプリズムの透明さを持ったサウンドが現代的で、リーノのコンセプトにマッチしている。
この楽曲が無から時間をかけて生まれ、そしてそれに合わせてこの映像を作った人たちがいる。そう考えるだけで尊い。

 

2026年になっても3DCG主体のミュージックビデオというのはあまり多くは見られない。特にアニメ調、キャラクター主体だとなおさらである。
幸い日本にはMMDという文化があるが、MMDにはMMDの特異かつ得意な形態があり、「3DCGのミュージックビデオ」とは少し違う、という認識である。それぞれに違う栄養がある。今回とりあげた「Mirairo Rider」はまさしく3DCGの栄養をふんだんに含んでおり、一度見るだけで成人男性の一日に必要な栄養素を摂取することができるだろう。

つまり何が言いたいかと言うと、とにかくこれは「中々お目にかかれない映像である」ということだ。能動的に探しに行っても、ここまでのものを見つけることは至難である。昨今の流行から「アニメーションMV」というカテゴリであれば見たくなくても見られるくらいだが、3DCG、アニメ調キャラクター、萌え豚向けとなると全然ね...。

 

もちろんこれは流行うんぬんの前に、工数的に仕方ないことであることは重々承知している。モデリングには時間も金もかかる。フルスクラッチならなおさら、アセットの数だけ時間がかかる。そこにアニメーション、カメラ、エフェクト等々が乗っかる。そしてこれらの技術が恐ろしく属人的で細分化されているというか、チームで作らないと出来上がらないのだ。ごくごく稀に全て一人でこなしているクリエイターなどもいるがあれは狂気の沙汰であって参考にはならない。

技術の発展で昔より楽に作れるようになってたりしないかな、など夢想することもあるがどうもそのような気配は無い。

 

そう考えるとこの映像は興味深い視点を持つことができる。
エンドフィールドはそもそも3Dのゲームであり、キャラクターも3Dが原典であると言っていい。ゆえに、リーノが3DCGで歌って踊っているのは全くもって自然なことであり、納得感がある。いわゆる「3D化」ではない、最初から2Dと3Dの隔たりを持ちあわせていない。
また、3Dゲームを作っている以上、チームはまさしく3DCGの専門家たちだ。当たり前かもしれないが3DMVの制作は3Dゲームにおけるムービーシーンの制作とほぼ同義なわけで、「その技術を持ってる人たちはみんなゲーム作ってるのでMVとか作らん」とか言われてもおかしくはない。だからこそ、エンドフィールドがアイドルキャラを作ってライブシーンを制作するに至ったのは私にとって偶然の幸福と言える。だってこのゲームアイドルマスターじゃねえもん。荒廃した世界で工業しながら敵をボコボコにするゲームだから。

 

ちなみにこれは被害妄想だけどまだ「3Dアニメ=手抜き」ってイメージ持ってる人いるんじゃないだろうな?いたら出てこい、監禁していくらを一粒ずつ食わせてやる。
モーションキャプチャーとアニメーションは違うんだよ。キャプチャーしたモーションをアニメーションに落とし込む、現実の動きをアニメの動きにする作業がどれだけ大事だと思ってんだ。CGWORLDの角で殴られてえのか。


一方ここ最近、3DCGのアニメが大炎上したと思ったら別の3DCGアニメが大成功してたりで感情が忙しい。結局お客さんは出された料理を食って味の感想を言っているだけで、そういう商売の土俵なのは確かだ。余談でした。

 

 

話を戻す。というかそろそろ締める。

これは常々言っているが、ここ数年大流行の「バーチャル」という文化は現実じゃできないことをやりたいんだか現実に寄せたいんだかハッキリせず半端になっている節があるため、今回のこの「Mirairo Rider」のように好き放題な演出を盛り込んだ映像は大変気持ちが良い。痛快である。そして大変貴重である。

 

どういう話の運びがあったのかは知らないが、経緯はなんであれ、この企画を通して出力してくれたHypergryphには感謝しかない。そしてキャラ、音楽、映像の制作に携わった方々に最大級の賛辞を。

 

youtu.be

 

endfield.gryphline.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

ここまで読んでくれた方に、私が知っている「3DCGを用いたMV」をいくつか紹介する。
また、こういった映像に大変飢えているため、もし他に知っていたらぜひ教えてください。お願い。

 

 

MILLENNIUM PRADE - KAIZO

youtu.be

Fly With Meも最高だがKAIZOが飛び抜けて良い。カーチェイスシーンは必見。

 

 

HIDETAKE TAKAYAMA - Express

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この映像と音楽について語るには余白が狭すぎる。

 

ヨルシカ - だから僕は音楽をやめた

youtu.be

再生数2億...??????????ちょっと現実味が湧かない数字だ...。

ヨルシカはいくつかのMVが3DCGで制作されている。なお、「ノーチラス」や「春泥棒」のMV制作を務めた森江康太氏は、先述したHidetake Takayama「Express」のMVでも監督を務めている。

「Express」のMVに感銘を受けたn-buna氏がオファーしたとのこと。

 

 

K/DA - POP/STARS

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再生数6億......?????????

LOLの国際大会のプロモ映像として作られたとかなんとか。
ドン引きするくらい出来が良いです。

 

 

Pa's Lam System - I'm Coming

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非常にy2kな3DCG MV。

たぶんwipEoutに影響受けてる。たぶん。

 

 

 

初音ミク - VOICES (Xperia CM)

XperiaのCM映像。tilt-six氏の楽曲に、初音ミクの3DCGアニメーションがついている。

なお公式から映像は出ていない。

 

 

倉本千奈 - Wonder Scale(ライブシーン)

学マスのライブシーンはどれもクオリティが高いが、映像内で千奈ちゃんが階段を登り始めたのを見た時はびっくりしすぎて鼻水出た。

こちらも公式から映像が上がっていないためリンクは割愛。

学マスインストールしてね。

 

 

他にもある気がするけど思い出せないので一旦以上。もし3DCGのミュージックビデオ、特に萌え萌え美少女の映像に心当たりがある方はぜひご連絡をお待ちしております。

 

 

自慢

 

なんとなく気が向いた。

ああ、これがはてなブログの空気か。
久しく忘れていた。思えば私の人生が決定的におかしくなっていったのは、文章を書き始めた頃だった。

過去の自分はずいぶんと頭が悪かったが、何者にも己を否定させないという邪気にもとれる情熱があった。それを文章にして出力していた。顔を毟り取って洗濯機に放り込みたくなるほど恥ずかしい過去でも、自分は忘れないでいようと思える程度のものではあった。

今の自分にとって、文章はSlackというツールを使うためのスキルの一つにしかすぎない。
よく先輩に「君は言語化が上手だ」と褒められた。それがなんだか嬉しくて、言語化は自分の武器の一つだと思って生きてきた。

しかし、ここ最近少し考えというか、生理的な部分に変化が起きてきた。
言語化というのが、本来言葉にしなくて良いもの、秘匿されてこそ魅惑的なものを図々しく暴く行為に思えて仕方がなくなってきたのだ。

 

そう考えてふと思い返すと、いつもそばに黙っていてくれたのはやはり音楽であった。
ほとほと自分は芸術家でありたい生物であり、そして何故そうであるのか、その理由の輪郭がこの齢になってよやくおぼろに見えて来たような気もする。音楽は、芸術は、とても曖昧なものだ。自分にとって、曖昧さこそが最後の盾であり、その結論に行き着くことをなんとなく察していたのかもしれない。

 

 

ところで先日、「僕はその時代に生まれなかったから」という楽曲をYouTubeに投稿した。
ありがたいことに今日時点で14万再生を超え、高評価は1.6万、チャンネル登録者数は投稿前と比べて5000人ほど増えた。なお、これは自慢である。

 

直前で曖昧さを美徳としておきながら数字を並べて胸を反らし始める態度は醜悪と断じられても仕方ないが、一旦横に、横の横の横あたりに置かせてもらうとして、この出来事は私に多くの喜びを運んできた。そして真に驚くべきは何一つとして悪いものを運んでこなかったことだ。

ただ自分が好きな楽曲を作って、なんだかおしゃれなタイトルをつけて、素晴らしいイラストを看板にし、放流し、たくさんの人に聴いてもらえた。
言ってしまえばYouTubeのアルゴリズムが為したことだ。
仮にそれだけの話ではないと仮定して、何故この曲がたくさん聴いてもらえたのか、別に分析をしようと思えばいくらでもできることだが、私は単純に、私の楽曲を良いと思ってくれる人がこんなにもたくさんいるのだという事実が、ひとえに嬉しかった。

一方、毎日動画に対してコメントが投稿されていくのを見て、私は少し後ろ向きな覚悟をしていた。いつかは批判的な意見が放り込まれて、誰かがそれに食ってかかって、少なからず荒れたりするものだろうと。

しかし、投稿から2週間ほど経った今でも、その気配は無い。
これだけ多くの人の目に晒されたものに対して、インターネットが冷たくないことなどあるのだろうか。だが実際にコメント欄は今も平穏なままだ。
視聴者の9割は私のことを何も知らない。私がこれまでどんなことを為してきたかも、どんな失敗をしてきたかも知らない。YouTubeのアルゴリズムが運んできただけで、そこにはなんの文脈も無い。
これは私にとって、音楽の原初的な温かさを肌に感じると同時に、我々が日頃いかに本質の横にあるもので騒いでいるのか思い知らされる状況であった。視聴者のほとんどは、私に興味が無い。だから、批判する理由が無い。きっかけが無い。多くの人間はどこまでも人間にしか興味が無く、それを除かれるとどこまでも素直なのだった。

今回起きたそれは、目の前に美味しそうなりんごがあったから、食う。産地など書かれていない。悪趣味な皿に乗せられてもいない。みずみずしくて、美味い。それだけのことだ。たったそれだけのことが起きた。たったそれだけのことを起こし、実感を血に巡らせるのに30年もかかってしまった。
あるいは忘れていただけかもしれない、が、やはり私は「確認したことがなかった」のだと思う。

 

ひっそりと「確認できたこと」が、ついぞ芸術を志し始めた私にとって最大の自慢である。